葛嶺進龍山証厳坊
葛城山勝景

二之宿田鶴
かきかそうふたつの宿に幾千代と田鶴啼わたるむら鳥の声

根来寺晴嵐
小夜ふけてねころの山にたつ雲をはや吹はらふみねの朝風

粉河寺晩鐘
音にきゝていとみにしみる枕香の粉川の寺のゆふくれのかね

中津川鮮月
三つくりのなかつのかはの清けさに光りをしまぬ秋の夜の月

金剛山夜雨
世の中の千々のこかねのかたきねにのほりて夜半の雨やとるらん

二上嶽暮雪
玉くしけふたかみ山にしろたへのゆきにくれゆく年そふりつゝ

亀ヵ瀬帰帆
山川をあらしにつれて八千ふねのいくとせかふる亀か瀬のせと

犬鳴寺山桜
華さくら手とらんとせはうすくもるあなおそろしや犬鳴の山

龍之宿眺望
遠近を目たつの宿に見わたせはうの花ころに日そなゝめなる

牛滝山紅葉
あきもはやうしたき寺にゆき暮て外山にあけの錦をりしく

光滝寺鴛鴦
落葉さへ光るのたきのかたにおけるしもにうきねのとこのをしかも

一言神誓恋
一言のかみもちかひていまのよは恋のかけはしかけすもあらなん

当麻寺朝日
とことはにあさ日のあたるあさてりのかけにしたかふ御代を光れる

高天山長嶺
冨士すらも三国なりけりいやたかき四国にかゝるかつらきのみね

右十五首

別 記

茅原寺にて
ちかまさりまれらにしろし乳のみの茅原の寺の杜のはゝきき

金熊寺にて
朝なけにつくつくあふく三熊野の神とひとしくかねの御獄を

箕面山にて
岩はしる滝のひゝきや津の国の箕面の山と四方に名たゝる

ひなのあや
久堅の天に二十八宿あり、あらがねの地に三十六禽あり、総て六十四卦の数自然に備はる、志願なすこと又其理にまつらふ、法華経二十八品の嶺二十八里が間の御旧蹟をおこし、彼三十六先達を始め、国といふくにのかかわらは、こゝにつどへん日を見まくほしく、元和のむかしの御奇瑞を感ずるの余りこのみちにおもむきてより、抑三十六年にして、去年の弥生既に、霞の大王此みねにわたらせ給ひ、はからざりきみいづを蒙り、ついに本意をとくるの時こそ得たれ、嗚呼いさぎよしとやいはむ、はたお本偈なしとや言ん、おほん恵を報はんにせんすべなく、年くれはてて、あらたまの、春しり初る、梅が香の、かほる難波に鶯の、染かみ謡ふもなつかしうはなのうてなにおくみつの、文字を種として、あやふき言の葉を、つゝしるになむ。

畏胎嶺 未顕真実開
葛城の山もさかゆくときなれや法のはなふさもえ初てける

宗瑞夢 如是我聞
紀のうみや加田の御修法はやことなき君にそまさし夢のかけさす

以無作 諸法実相
彼岸になみたつ沖の友かしまさとりえてしれたかし深しを

此?怜 悉是吾子 
はるたつやかつらき山のつきねふはみなこれ君のかすみなりけり

洒法水 浄仏国土
三井のあかをそゝくかほりのたかま山たにのちさともやよなかれくめ

修採燈 現世安穏
御代をふくためしもなかきかつらぎのみねにたく火にくにもゆたやか

開旧経 心尚懐憂懼
かりそけんみちはおそろしそはつたひ命をからめかつらきの神

欲度衆 権化作此城
あしひきのかつらき山の中津川わたりえやすくみやこちに出ん

疑雑念 内秘菩薩行
世のうきを身にうけなんとちかひすらかけてそわたすかつらきのはし

何乎得 我願既満
たかまやま峯のあらしにとをからすくもるわたるとおとへそきく

転法輪 法華最第一
見ぬくにのわしのみやまかかつらきか業ふたつなきのりのたかねは

七童子 在七宝塔
玉かつらかつらき山のななとこにたからか光るうなる子のたう

離五障 龍女成仏
をみの子らあふきのぼれやたかま山いたらはやすく身のさはりけぬ

代病苦 我不愛身命
つひにゆくみちのをしへのたかま山さかゆくならはすてんいのちも

摂一尊 常有是好夢
かつらきのたかねを夢にみふさちのゆふたすきとや告てのたまふ

為修行 我常旋諸国
つぬさほふ岩はしかけてかつらきやよも山々をみかすみわたる

心不動 常在霊鷲山
四つくににかゝるたかまのみち守るこゝろはつねにいぬなきのやま

君具臣 不久詣道場
雲の居るふしにならはんかつらきのたかまの山にみゆきあらはや

臨機以 如是展転教
後の世のためにやまらむ日たかみのたかまのやまのみちひらきなせ

蒙号令 唯独自明了
法の王のりてこそあへしもとゆふかつらきの神さなくいかてか

祟高祖 我深敬汝等
千代の春みねに世をふるかにあらみその名もたかきかつらきの山

一乗嶽 即是道場
かつらきは二十八品にさきわけしはなもたへなりうくひすのこゑ

胎嶺故 各還本土
じか峰のはちすのうてなたかまやまよそにはなしとしる人そしる

暗放光 如渡得船
葛城や千代のためしそのこりける竹のそのふの君か御幸を

被神力 不戸鼓自鳴
たなつあめのこるにや晴となる神のいそしたかまのみねをてらせる

経年而 心念不空過
いのりつゝ三十六年に青柳のかつらき山やなひくかすみに

至自然 無諸衰患
かくまてになりになりては千代よろつとよさかのほる日のたかま山

嗟呼是 出家作沙門
こけころも法のつかさのつゆうけてよもてる月のかつらぎのみね

満志願 作礼而去
今はしる栄え久しきかつらきのなかくもかなといはひぬかつく

達宿意 衆罪如霜霞 結
年つもる思ひとけしもみほとけのかけとそ仰くこのたかま山

右開結共三十首

追加
かつらきのやつかさしみゝなほひとり竹のそのふや幾千世となく
○上ノ如ク妙典四字五字之御題ニ寄ル

開経
色も香も外面にうつる法のはなもはやひらかん時しなるかな
妙一
あなたふと神もほとけも天津風あふけはすくに降らさせたもふ
同二
つまことのしらへやみねのまつかせもおのつからなるものとかはしる
同三
往昔の親のをしへにさしもくささしもしられしみなはらからと
同四
よのつねにわかなすことのきよからてあなかしこみのなかれゆくすえ
同五
過ゆけばいかなるせめにあふやらんよになからへんことそましかは
同六
山の井のいつみにおひしえにしにやよそのあはれにみそかこちぬる
同七
朝露のみのうへとてやきもむかふこゝろみちひくかりのさとしか
同八
あはれてふことのうれしさわひしさをよくしるものはあるしなりけり
同九
春の野のあほひとくさも打なひくあらしに法のこゑのみそたつ
同十
染かみのあらゆる数の内外にもあやにきらめくにほうとりの音
同十一
ありきぬのたからのつかはいつこそとへはこたへにみのうれとなん
同十二
かしこしないつゝのさはりあるものもみなみほとけのくにゝゆくとは
同十三
世のためにならは命もをしからしかねてなきみと思ひしられて
同十四
こよひこそせめてたゝちの夢にたにみまくほしけれ無為の都を
同十五
野も山もいたらぬとこはよもあらしあふけは涼し風のこゝろは
同十六
なかめやるうなこそ法のみちのおくやまたしらぬ火のつくし果しも
同十七
天の下のこる人なくおしなへてつひにゆくらんつるのはやしに
同十八
ゆきあられ品分にしも世のひとをさとしのたねやとけてしられき
同十九
何くれとおもふくまなくすみやかになりゆくまゝそ法のみなそこ
同二十
たちむかふ人を仏とおもひなはまた思ふらん人やほとけと
同廿一
いまさらに華のうてなとしるからはわかみのりえんいかにたかくも
同廿二
あけぬれはくれゆくものをいたつらに過してよとやみをくやみけん
同廿三
ゆきにくれ山路あんしのひとつ屋にいこへはふるき友のかくれ家
同廿四
咲にほふはなふるくには糸たけもうたぬつゝみもひとりなるとは
同廿五
年の緒になかひのいとをかけおけはえならぬこともやかてなるらん
同廿六
かりのやとたちゆくまての夢なるをしらておとろく人やさかなし
同廿七
法の師のかたちなせともかなしきはいつかこのみの世を救ふとき
同廿八
墨染のゆふへにふしつあしたには仰きつ筆にかきのこしけり


にごりなばみ世のほとけにかしこまるこゝろうつせや法のみかゝみ

○御遠忌の庭儀を拝して
千尋あるかけさす竹の高つ祖の法のふしふし世に光ります

奉納御寶前 願主 役氏某
嘉永三庚戌年三月中五日

右原本は、滝本坊に有しが、見者悉く所望す、故に我友大坂堺筋和泉屋藤兵衛、財を喜捨し板にえりて、ここに行せん人のために、寄附せらるゝものなり。

戌 六月七日
山田喜四郎
西岡喜十郎

此満財施功 出日域甘泉
彼溢法施徳 入月氏豊川

曷山道人記

常住窟置版